見えてきたのは、企業の発信内容と求職者が求める情報のギャップ
日々、大分県内でドライバー(トラック・バス・タクシーなど)の採用活動に向き合っている経営者・採用担当の皆様、こんにちは。
第1回のコラムでは、現在のドライバー採用市場が「超売り手市場」であること、および法改正(2024年問題など)を経て求職者のニーズが「安心・安全に働けるクリーンな環境」へとシフトしている全体像をお伝えしました。
今回はさらに一歩踏み込んでみましょう。舞台を私たちの「大分県」に絞り、独自に行われた「大分県民の運送業界に対する意識調査」のデータを紐解きます。
【今回の調査概要】
調査対象:大分県民200名
回答内訳:業界に「興味あり」41名/「興味なし」159名
この意識調査の結果と、大分県民のリアルな本音に深く向き合ってみると、「企業側がアピールしたいこと」と「求職者が本当に知りたいこと」の間に生じているギャップ(認識のズレ)が鮮明に浮かび上がってきます。実は、このズレに気づき、求人票や発信内容を少し変えることこそが、県内の競合他社の一歩先を行くための最大のヒントにほかなりません。
『ドライバーの仕事って、実際どうなの?』そんな大分県民の不安や期待が、データから見えてきました。
誰もが抱く「長時間労働」のイメージを、どう安心に変えるか?
データを見ると、ドライバー職に対して興味がある人もない人も、共通して抱いている強いイメージがあります。それが「長時間労働」や「体力的にきつそう」という根深い不安です。
業界へ好意的な目を向けている「興味あり層(41名)」でさえも、その約4割にあたる11名が「長時間労働が不安」と挙げており、いざ応募・就業するとなると二の足を踏んでしまう要因になっています。背景には、実際の時間そのものより、「自由がきかない」「休めない」というイメージが生活の自由を奪われる不安として働いているためと考えられます。
ここで重要なのは、長時間労働をただ否定するだけのアピールでは、求職者の不安を解消するには不十分かもしれないという点です。本当に求めているのは、自分の生活に合わせた具体的な選択肢。今回の調査結果からも、安心感を覚える要素として、次のようなキーワードが浮かび上がっています。
「勤務時間を選べる」
「子育て中でも働ける」
こうした「選択肢のある働き方」が明確に伝わると、生活の自由を奪われる不安は安心感へと変わるでしょう。多様なライフステージに寄り添う姿勢を示すことが、まずは大きな一歩となります。
「免許取得支援あり」と書くだけでは、なぜ応募が来ないのか?
福利厚生として「免許取得支援制度」を重視すると答えた人は多く、データからは「これまでターゲット外だと思っていた潜在層」を惹きつける大きな可能性が見えてきました。
現在、業界に「興味がない」と答えている層(159名)であっても、その約20%(31名)が「もし免許取得の支援制度があるなら、運転手の仕事を考えますか?」という問いに「はい」と回答。この層は「運転自体は嫌いじゃない」「給与には興味あり」とも回答しており、決して無関心なわけではないのです。
しかし、ここにも大きなズレが存在します。求人票などで「制度あり」と掲げる企業は多いものの、その詳細や適用条件が伝わっていないことが、応募・就業のブレーキになっているようです。求職者の頭の中には、次のような疑問が浮かんでいるのではないでしょうか。
「何が無料になるのか?」
「自分は対象か?」
「支援はコスト面もになのか?スキル面のサポートもあるのか?」
「取得後どうなるのか?」
制度をただ「有り」と記載するだけでは、判断材料として不足していると言わざるを得ません。調査から見えてきた改善のポイントとして、たとえば「対象者の例(例:25歳フリーター可)」や「取得後の配属先」など、求職者が「これなら自分にも関係がある」「これなら挑戦できそうだ」と直感できる具体的な情報とセットで提示する工夫が必要です。そうすることで、応募への心理的ハードルは下がると考えられます。
未経験者が恐れる「事故リスク」と、経験者が動く「直感的な動機」
今回の結果をさらに深く読み解くと、応募をためらう大きな心理的ハードルとして、自身の運転スキルへの認知や事故リスクへの懸念が挙がっています。
「興味なし層(159名)」において、不安を感じる点として最も多かったのは「体力的にきつそう(92名)」。それに次いで、半数以上の人が「事故のリスクがある(88名)」を挙げており、技術面へのハードルを強く意識していることが分かります。しかし、運転に自信がないと回答している方の中でも一定数が「免許取得支援制度があれば検討するかも」と回答しており、支援内容の捉えられ方によって回答数も変わってきそうです。スキル面のサポートがあり運転技術への不安を払拭できると感じてもらえると、検討する層が増えると考えられます。
一方で、すでに業界に「興味がある」と答えている層(41名)の動機は、理屈ではなく直感的なケースが多いことも判明しました。
「運転が好きだから」:23名(半数以上)
「給与が良いから・高収入だから」
「身近に感じる」など
直感や感情に基づいているケースが多いことも判明しました。「好きなことで働ける」といったポジティブな理由があるため、理屈よりも共感・共鳴が決め手になる傾向があります。
ここから言える戦略は次の2つです。
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- ●興味なし層(未経験層)に対して:対象者の例や支援制度の詳細を分かりやすく提示し、「自分も支援の対象になる」「運転に自信がなくてもこれなら不安を解消して挑戦できそう」と判断できる材料を提示すること。
- ●興味あり層に対して:条件の数字だけでなく、個々の感情にアプローチするストーリー形式の訴求を重視し、動画やLP、SNS等の感情接点を通じて共感を呼ぶこと。
どこの層を取りに行くか?戦略的なターゲット設定へ
今回の内容をまとめます。
大分県民の意識調査の結果を見つめ直すと、現在の採用課題の多くは、自社の魅力がないからではありません。求職者が意思決定をするために必要な「判断材料(制度詳細や働き方の実態)」の提示が不足している点に本質があります。
裏を返せば、求職者の不安(生活の自由への懸念、制度への疑問、運転スキルや事故への恐怖)に対して、給与モデルや体験機会、制度詳細などの具体的な判断材料を先回りして提示できれば、それが突破口となります。結果として、他社との圧倒的な差別化を図ることができるのです。
そこで重要になるのが、「自社はどこの層を取りに行くのか」というターゲット設定と戦略づくり。
「運転が好きな経験者」を狙うのか、それとも「免許支援があれば検討したいと考えている未経験のフリーターや子育て世代などの層」を開拓するのかによって、提示すべき判断材料はガラリと変わります。
自社の強みと今回のデータを見比べながら、「次の一手」を前向きに考えていきましょう。
次回の第3回コラムでは、このデータを踏まえた上で、大分県内の求職者に対して運送業界に関するインタビューを実施した際の「生の声」をさらに深く掘り下げていきます。求職者が企業のどこを見て、何を決め手にしているのか、よりリアルな実態に迫る予定です。どうぞお楽しみに!
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